結論から言うと、タカギさんは見事、クーデターを成功させてしまいました。

その部長は、その事件から3ヵ月もしないうちに、異動させられてしまったのです。

タカギさんと飲めば、いつでもこの話題で盛り上がりました。

「ガハハハハー。面白だろ?最高じゃん。ぎゃはははははー」

居酒屋で何度、馬鹿笑いしたかわかりません。

それほど痛快な出来事だったようです。

さて。
この事件は、どの会社でもある出来事なのだと思います。

職位があがればあがるほど、社内政治、パワーゲームは繰り広げられるものです。

ただ、この事件を聞いて、
私は自分自身の思い込みと決別しなければならなくなりました。

それは私にとって、本当にショックだったのです。
居酒屋で馬鹿笑いしながら、私はしかし本当にショックを受けていたのです。

私が働いていたその会社は、誰もが知っている有名な企業です。

そしてその部長は、これまた誰もが知っている有名な企業からヘッドハンティングされて移籍してきた人でした。

つまり、ハイキャリア、仕事で成功してきた人です。
年収もとてつもなく良いものだったに違いありません。

もちろん、そのようなキャリアを積むには、良い大学に行っていないといけません。もちろん、彼は有名大学出身でした。有名大学を出て、有名企業で働き、出世街道にのっていく。

これが、日本社会では”成功している人生”と呼ぶのだと思います。

この社会では、良い学校に入るために、必死で勉強し、良い偏差値をとり、良い内申をとらなければいけません。競争を勝ち抜かなければいけないのです。

良い学校に入った後は、またしても勉強して、良い偏差値をとり、有名な大学に入ることが成功の条件になっています。

なぜなら、有名な企業は有名な大学から人を採用するからです。

こうして有名な企業に入れたのなら、今度はいかに出世するか?キャリアを積んでいくかが、大事となります。

仕事で成果をだし、数少ない椅子を確保することが、より良い人生の指標なのです。
他人より優れた人生というのは、このような人生になっています。

これが、社会の基本的な考え方です。

だから、親は子供に必死で勉強させるのでしょう。
よりよい人生の成功条件は、このようなものなのですから。

有名な企業は、日本社会をリードしていく存在です。
リードできるには、社会よりも先に進んでいなければできないでしょう。

よって私は、有名な企業にはそのような進歩した人しかいない、とずっと思い込んでいました。

社会の考え方はそのようなものなのですから、その線で考えていけば、有名企業というのは、進歩した存在だらけのはずだからです。

ただ私には、父がいて、父を見ている限り、それはそうではない。という気がしていたのですが、自分自身の理解が間違っているのか、正しいのかを測るために、そのような会社で働くことにしていたのです。

このように、私はこの社会がとっているデフォルトスタンダードというようなものの核心を非常に知りたかったのですが、この事件は、私にそれはそうではない、ということを、嫌というほど教えてくれました。

それまで、意地悪な人もいました。
妙に不親切で、決めつけが多く、不平不満が多い人もたくさんいました。

でも、それらは私にとっては、まだ決定打とはなっていませんでした。

「しかし、彼らは進歩した存在のはずだ。私よりも、ずっと何か崇高なことを知っているに違いない。しかし、一体彼らは、どこらへんが進歩しているのだろう?一体、彼らが知っていることは、本当は何なんだろう?」

仕事をしていても、居酒屋で飲んでいても、私はこれしか関心がなかったのですが、その答えは全然見つかりませんでした。

そしてついに、私の思い込みに対する本当の答えがやってきたのです。

(つづく…)

【レベル】:ゴールドクラス~ユニティクラス