彼女は、高貴の公達たちに無理難題を要求し、その中には要求を満たそうとして死なせてしまったことにひどく傷つきました。

繰り返しになりますが、この時点で彼女はもうこの世界にいたいとは思わなくなり始めているのです。

なぜなら、この世界はどうやら全部偽物だということに気づいてしまったからなのです。

彼らが求めているもの、この世の全ての人間が求めているものは、人がこしらえたものだからです。
本来あるものではなく、バラバラになった間違ったエゴが作り出した産物だからです。バラバラになった者達が作り出したがゆえに、それは偽物なのです。

そしてもっとも彼女を苦しめ、そして私たちを苦しめているのは、いつの間にか、彼らと同じように彼女も私たちも偽物を崇め、そしてそれらを作り出してしまっている、ということなのです。

彼女は、自分の虚しさを埋めるために、家の裏庭に同じような偽物を作り出していました。
自分の裏庭に寂しさや虚しさを紛らわすような、ただそれだけのために作り出したがゆえに、それは偽物だった。

彼女は、そのことに気づいたのです。

すべては、偽物を求め作り出した自分の責任だと気づくわけです。
姿かたちだけの綺麗さゆえに、それはイメージであり、偽物の自分なのです。

そのような偽物の姿に、全員を騙してしまった。
彼女は、その事に気づき、深く傷ついたのです。

それは、私たちも同様なのです。
いつの間にか取り込まれてしまっていた自分自身の弱さに深く傷ついているのです。そして、それが罪悪感に変性し、果ては自らを憎むようになり、そしてそれを外側に投影し、世界を恨み、憎むようになるのです。

これが、ここで起こっている神聖原理の反対の原理です。

彼女は、この世界そのものが間違っていること、そして世界自体が何の解決策も持ち合わせていないことに気づいたのではないでしょうか。

それは、圧倒的なまでの絶望感と失望感です。
この世界の中に救いはない、という。

ここではじめて、ここは私がいてはいけない世界だったと気づくのです。

そして、その極めつけは帝です。

彼に不意に後ろから抱きすくめられたとき、彼女は究極のおぞましさの中に浸かり、そして非情さに戻りました。

彼は、彼女に気づかれないように行動し、隙を見て、後ろから襲ったのです。
この一連の行為は、何かに似ていないでしょうか?

そうです。
獣です。

獣は、息を潜ませ、獲物の隙を伺い、獲物が油断したところで飛びかかり、食い殺します。

帝のこの一連の行為は、まさしく獣の象徴です。

帝と言うのは、国のトップであり、象徴です。
最も位が高い人間が獣そのものであるとは、なんたる世界でしょうか!!

国の象徴が獣を現しているのなら、まさしくこの世界に救いはないのです。

これは、このかぐや姫の物語は、単なる物語なのではありません。
誰かが気まぐれに書いた物語ではないのです。

何度も繰り返しますが、この物語は、この世界はあなたの故郷ではない、あなたが本当に帰る場所ではない、ということを気づかせるためにあるのです。

そして、私がこうしてくどくどと話していることの意図もまた同じなのです。

彼女の痛みは、私の痛みなのです。
彼女の絶望を通して、私たちは学ばなければいけません。

そうでない場合、何が起こるかと言えば、他の者の経験から学ばないのなら、自前で創り出すしかないのです。それと同様の絶望かそれ以上の絶望的状況を自らに与える事で気づく、というわけです。

そして、ほとんど誰もが、それが探求者であれライトワーカーであれ、なんであれ、ほとんど全ての者は後者を選んでいる、ということなのです。

(つづく…)

【レベル】:クリアクラス~ユニティクラス