「俺のケーキが、ねぇ!!」

この事件は、人間がどこで機能しているのか?
私がずっとずっと信じていたものが、実はそうではなかったと気づかせてくれたきっかけの一つでした。

この話は、私が働いていた職場で実際に起こったものです。
とはいっても、その事件は、私がそこで働くちょっと前にあったもので、その事件にあった本人(タカギさん)から聞いたものです。

その日、タカギさんは20時過ぎになってもまだ仕事が残っており、残業をしていたそうです。

仕事がひと段落して席を立ってみると、センターデスクの上にケーキが置いてあることに気づきました。

センターデスクというのは、誰かが座って仕事をする席ではなく、いろいろな告知をしたり、各種の鍵が置いてあったり、協力企業からの差し入れやお土産が置いてあったりするような趣旨で使われている机でした。

ランチ以降何も食べていなかったので、タカギさんはお腹がぺこぺこでした。

「いやー、ナイスタイミングだよ。お腹空いているから、ケーキでもいいや。」

そう思って、他に残っている3,4人の同僚に声をかけました。

「ケーキが置いてあるよ。みんなで食べようよ」

それを聞きつけると、彼らはやってきて

「あれー。気づかなかった。誰が置いてくれたんだろ。誰か旅行行ってたの?」
「おいしいよ、これ」

もちろん、みんな、それが差し入れであることを疑いませんでした。
先ほど書いたように、その机は基本的に、そのような役割を持っていたからです。

旅行から帰ってきた人が、紙に「どうぞ」と貼り紙をしてお土産を置くのが通例になっていました。

彼らはありふれた会話をしながら、そこに置いてあったケーキを全部食べてしまいました。

ゴミを片付けて、さー、仕事再開。
みな、席に戻って、仕事に取り掛かり始めました。

「早く終わらせて、とっととかえろー」

そんな風に思いながら、タカギさんは、仕事をしていたそうです。

しばらくすると、部長がオフィスに入ってきました。

(つづく…)

【レベル】:ホワイトクラス以下