さて、そんなかぐや姫の想いとは関係なく、貴公子達はこぞって求婚するわけです。

彼らは、かぐや姫に命じられるがままに目的を果たさんとあらゆる手を尽くします。

しかしながら、彼らにとっては、彼女は単なる欲しいものの一つに過ぎないのです。宝石と同じように、彼女は、彼らにとって、一つの物に過ぎないのです。だから、欲しいもののためなら、彼らは何だってやります。

しかし、ひとたびそれだけして得られないとわかったのなら、途方もない怒りと憎しみにかられ、自分のこれまでの努力を相手に請求し、訴え、その怒りと憎しみを所構わず撒き散らす事になります。

果たして、これが人の貴い姿なのでしょうか?
貴い、というのは、このように血眼になって求め、そしてなりふり構わず奪い、そして得られない場合は、悪鬼のような振る舞いをすることなのでしょうか?

これらが、真に貴いとされる姿なら、確かにこの世は地獄そのものです。

貴い、とはつまり、誰よりも欲深いことなのですから。
誰よりも欲深くあれ。
こんな信念は、進歩した存在ならまず誰もが理解できず、受け入れられないものなのです。

しかし、この世界は違います。
違ったのです。
それでいいのです。

私がこのことが分かった時、どんなに驚いたことでしょうか!!

道理で生きづらいはずだったのです。
友人も当然のように、私と同じ感覚を感じて生きているはずだ。
家族だって、同じ感覚を共有して、それでも何か大きな理想に向かって生きているはずだ。

そう思っていたのですが、この世界のルール、信念、土台は全く違っていたのです。

彼らが見ている世界は、そうではなかったのです。

だから、かぐや姫も、この同じ視点、同じ感覚を持って生きているのです。

かぐや姫とは、つまり私のことであり、あなたのことなのです。

さて。
彼女は、どうやっても彼らと結ばれる気はありませんでした。

けれども、そんな彼女の聞き分けのなさに、相模はやってられないとばかりに、かぐや姫の家庭教師を辞めてしまいました。

ここでの聞き分けのなさというのはつまり、彼女が相模のレベルにまで落ちることが出来ないことを意味します。

あるレベルを超えると、もうその下に落ちることはできなくなります。
彼女が、相模のレベル、翁のレベルに落ちれないように。

あなたが、かつては何の問題もなかった周囲の人間関係に付き合うことができなくなるように。もう彼らと、かつてのように付き合うことが出来なくなるのです。そして、あなたが去るか、彼らが去るかのどちらかになるのです。

しかし、ここで一つ立ち止まってみてください。

翁は、かぐや姫に姫としての素養を身に付けてもらおうと懸命になっていました。そして、相模は翁の意を受け、これまた真剣に様々な習い事やしきたりなどの教養をかぐや姫に身につけさせようとしていました。

しかし、どうでしょうか?

翁は、かぐや姫を見つけた時、天から与えられたものだと思いました。
天から、です。

つまり、この時点で、彼は自分自身よりも天の存在が上であることを認めています。
であるのなら、そこからやってきた存在に、一体何が必要だというのでしょうか?

自分たち以上の存在に、はたして習い事が必要なのか?
自分たち以上の存在に、歩き方や知識が必要なのか?

すでに姫として確立していた存在に、一体どんな姫としての教養が必要だというのでしょうか?

翁も相模も、輝きを放つことすらできません。
そんな存在が、彼女に何を身につけさせようというのでしょうか?
輝きを放つことも出来ない教師が、既に輝いて、周囲を明るく幸せにさせることのできる存在に、何を教えられるというのでしょうか?

彼らは、もちろんこのことに気づきませんでした。

止まることが起こって、

「はて。なぜ私は、この子に教養をつけさせようとしているのだ?すでに、これほどまでに魅力的で輝きを放つ存在に、この世の知識がなんの役に立つというのだ?これほど魅力的で輝きを放つ存在が、歯を黒くしたり、眉を剃る必要があるのか?私の妻も、相模もそんなことをしても、この子のように輝けないというのに。では、なぜそれらをさせようとするのか?一体、私は何をやっているんだろう?」

という、これです。

だから、なのです

これが盲目でなくて、一体何だというのでしょうか?
自分だと思っている自分だから、自分がやっていることがわかっているようで、気づかないのです。

であるがゆえに、ここには救いがないのです。

そして、このことを気づかせるために、あらゆるマスターが現れるわけです。

ここでの問題は、あなたは、いったいどちらを選びたいのか?
ということです。

(つづく…)

【レベル】:ホワイトクラス~クリアクラス