「それはあまりにむご過ぎる仕打ちじゃないか!?」
と彼女を非難しました。
そうです、非難するのです。
なぜなら、彼にしてみれば、全力で彼女の幸せのためだけに尽くしてきた、という感覚しかないからであり、彼は彼なりの正しさの中で生きているからです。
そして、そのことにも盲目であるために、非難するのです。
「お前が悪い、俺は悪くない。全部、お前が悪いんだ」
ここで言われていることの本質は、こういうことです。
彼女は、非難しませんでしたが。
おわかりになるでしょうか?
あなたが生きづらい、この世の中にうんざりする、という根本的な原因は、ここにあると言えます。
あなたの周り中、そしてたぶんあなた自身もこういう風にして生きているからです。
再度繰り返しますが、彼は、彼女を苦しめようだなんて、全く思っていなかったし、実際、彼女が苦しんでいたことすら、気づけなかったのです。
同様に、あなたの周りの家族も友人も恋人も、あなたを苦しめていることなんて気づきもせず、ただ自分の正しいと思っている通りに生きているのです。そして、あなたも。
あなたにチャンスがあるのは、これを最も深いところで受け入れられるのなら、そのような生き方があなたにとって理想なのかどうなのか?それを検討できる、ということです。
そして、もし違うのなら、あなたにとって理想とはどういうものなのか?それを再検討できるチャンスが生まれた、ということです。
そのために、私はこうしてあなたに伝えています。
さて。
彼女は、帝に抱きすくめられ、この穢れた世を立ち去り、帰ることを決意した瞬間、あらゆることを”思い出し”始めました。
私は、どこからやってきたのか?
私は、一体誰なのか?
一体、何の為にこの世界にやってきたのか?
ついに、このことに”目覚めた”のです。
しかし、まだ彼女には葛藤が残っています。
こんな世界にはもういたくない、という想いと同時に、なぜかまだ翁や媼のもとにいたい、この世界はすばらしいもののはずだ、という希望を持っていました。立ち去りたいのに、まだいたい、ということは、非常に矛盾していますが、これはあなたになら、きっとわかるはずです。
なぜなら、あなたもまたこの世界に嫌気がさしているにもかかわらず、この世界を見ているからです。あなたにとっては、まだこの世界は重要なのです。
だとすると、いかにこの物語があなたのことなのか?
それがわかるのではないでしょうか?
この物語を観て、ただちにただならぬ共感を感じる理由は、これです。
彼女、かぐや姫は、ここに至って想い極まるわけです。
全てに気づいた瞬間、皮肉なことにこの世界の魅力に抗えない気持ちになっていきます。
一体、私はこの地で何をしてきたのか?
何のために、私はこの地にやってきたのか?
目的を果たせない愚かさに、彼女でさえ、自らを責めたのです。
ここは、まさしくそういう世界なのです。
あなたが見ている夢の世界は、それほどまでのところだということです。
繰り返しますが、月に帰ることになり、ようやく、やっとのことで、彼女は
なぜ、何のためにこの世界に降り立ったのか、
どうして見知らぬこの世界の歌をずっと以前から知っていたのか?
そのことに気づいたのです。
ポイントは、捨て丸たちとの楽しい日々の中では気づけなかった、ということです。途方もない苦しみを通してしか、このことに気づけなかったのです。
いいでしょうか。
しかしこれは、途方もない気づきです
これほど真に迫った場面と言うのは、そうありません。
たとえ映画であっても、それがアニメ映画であっても。
ここには、私たちの重要な宝があるのです。
それだけのものが、ここに秘められています。
この場面には、私が止まり、あの静かな瞬間をもたらすだけの叡智が挿し込まれています。
彼女は、鳥や獣のように、ただ生きる、ということを体験したいがために、この世界にやってきたのです。
この世界で生きるという事の手ごたえを感じてみたかった。
彼女の目的は、それでした。
雨や風や土とともに生きることがどんなことなのか?
その手ごたえを感じてみたかった。
しかし、蓋を開けてみれば、まったくその目的は実現されておらず、間違ったエゴになりきってしまっていたのです。
彼女の後悔は、ここでそれを果たすことでした。
物の世界で生ききる、ということを望んでいました。
ですので、間違ったエゴとして、ここに残りたいと願ったのです。
けれども、いくら彼女が残りたいと思っていても、決められた事はどうしたって覆せません。つまり、ここで言っている事は、自分だと思っている自分のレベルの意志というものの効力のなさなのです。実権のなさなのです。
自分だと思っている自分がこうと決めても、上位のレベルで決めたことには逆らえません。だからこそ、私たちはギブアップするしかない、ということなのです。
(つづく…)
【レベル】:クリアクラス~ユニティクラス
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