さて。
自らが何者であるのかを思い出すことがどれだけ重要なのか?
ということについて、再認識するために非常に良い作品があります。

このWeb講義で何度も触れていますが、『千と千尋の神隠し』と『かぐや姫の物語』というこの二つの映画は、思い出す事がどれほど重要な事なのか?ということをものすごくわかりやすく表現してくれています。

これから、この二つの作品がそれぞれどのようにそれを伝えているのかについてみていこうと思います。

☆『千と千尋の神隠し』から

まず、ではこの映画の中において、思い出す瞬間はどのように描かれているのでしょうか?

それは、ラストに近い段階、銭婆の家から帰る途中、竜の姿になっているハクの背中に乗っていると、千尋はおもむろに ”つながり” を思い出すのです。

そして、ハクが自分が見て接してきたハクではなく、彼の本当の姿を思い出し、彼の耳元でそっと告げるのです。ハクの本当の名前を。彼が本当は何者なのかを。

その瞬間、彼はハッと全てを思い出したのです。

自分自身が本当は何者なのかを。
ハクというかりそめの名前ではなく、本当の名前を。

みなさんも、たとえば山田太郎とか、そのような名前とともに生きてきましたが、あなたはそのような名前ではないのです。その名前があなたではありません。

私たちは、”親から与えられた” いわば湯婆婆に与えられた名前としてずっと生きてきていますが、あなたはそのような名前ではないのです。

ここで言っていることは、そういうことです。

☆『かぐや姫の物語』では

次に、この映画の中では、それはどのように描かれているでしょうか?

そのシーンは、かぐや姫が月に帰ること、自分自身が本当は何者なのかを翁と嫗に告げるシーンにおいてです。

自分自身はいったいどこからやって来たのか?
なぜこの地に降り立ったのか?

その全てを思い出した瞬間が鮮明なほど、描かれています。

☆思い出すことによって

どちらも言ってみれば単なる映画ですが、これほどまで真に迫るのは、つまり本質を突いているからこそなのだと、私にはそう感じられます。

ハクが自分自身が何者なのかを思い出した瞬間、ハッとし、全てが崩壊し落下していきました。

自分自身が本当は何者なのかを思い出すと、本当にこのような感覚になるのです。

自分だと思っている自分というイメージが崩壊し、その後、本来の神なる私が上昇させるような、自分という感覚がなくなってしまうほど心が軽くなり、揚がっていく圧倒的な感覚に支配されます。

また、かぐや姫のような通常の思考では到底辿り着けない、圧倒的な理解に支配されます。それは、考えなくても全てが明瞭に見える、はっきりと見える、という、いわば神の視力を取り戻すのです。

とりわけ、『かぐや姫の物語』では、それが鮮明すぎるほど完璧に描かれています。最初にこれを見た時、この声優の人は、本当に思い出したんじゃないか?と思えるぐらい、それほど完璧なシーンです。

ここには当然のように神がいかに働くか?
どのように私たちに思い出させるよう、完璧に機能できるのか?
ということを示してくれています。

だからこそ、私はこれらの映画を観るように勧めているのですね。
これらのテキストを読んだ後、このような映画を見直すことで、整理作用がはたらき、皆さんも視力を取り戻した状態で見ることが可能になり、その結果、わかるようになるからです。

☆爆発が起こる

このように、自らが何者であるのかを思い出す、ということは、良い意味でものすごい破壊力があるのです。

まさしく、

「ああ゛゛ーーー。そうだ!!思い出した。思い出したぞ!!!!」

「ドッカーン!!」
という、そのような感覚を伴います。
ハクが思い出した瞬間もそうです。
かぐや姫が語り出す時も、とんでもない力をそこに感じられます。

このように、ドッカーンとなること、破壊力を秘めているからこそ、

「爆発」
として語り継がれているのでしょう。

ニサルガダッタ・マハラジでさえ、

「爆発を期待してはいけないが、あなたの中にある種の爆発が起こるのだ」

というように言及していたように覚えています。

爆発は、破壊です。

では、何を破壊するかと言えば、それはあなたが自分だと思っている自分というイメージです。それまでのイメージによって蓄積されていた人生という幻想すべてを破壊します。

たぶん…ですが。
たぶん、これまで多くの発見者に出会ってきましたが、覚醒を求めている人で実現しない人の多くは、この爆発を期待している以上に、実は、それを恐れているのではないか?と、よくそのように感じる事があります。

なぜなら、粉々になるから。

だけれども、その先にある栄光をなぜか感じ取っているために、やはり覚醒を求めてしまうのだと思います。

こうして、実現したいけど怖くて進めない、という行ったり来たり状態のまま人生が進むので、これが魂の闇夜として感じられ、希望と絶望の間で揺れ動き続けることになるようです。

以上、なぜ思い出す事が重要なのか?
それは、あなたの中にある種の爆発が起こり、それはそれまでの人生を崩壊させ、本来の状態を回復させ、それによって上の段階にあがることにつながる、ということを意味するからだ、ということがわかったと思います。

思い出すことは、まず最初に求められている最も重要なキーです。
自らの名前を取り戻したハクを思い出して下さい。

千尋を見送った後、自分自身の処遇に関して何一つ、心配していなかったことを。自分自身の名を思い出すことで、湯婆婆の手先、湯婆婆の奴隷状態と決別することさえ、彼にとってはなんら心配する必要のない状態になったのです。
それまでは、忘れてしまっていたことで、彼は彼女に力を明け渡してしまっていたのです。しかし、彼女に力を求めず、自らの中に力があることを思い出したことで、その奴隷状態に終止符を打つ事が可能となったのです。

これは、この世界のことなのです。

ですので、私たちが思い出す事が出来るよう、このような作品が突如、生まれるのです。

このように、思い出す(remember)、ということが何を意味するのか?
それがどれだけの力を秘めているのか?

ということが、今まで以上におわかりいただけたのではないかと思います。

思い出した人も、そうではない人も、ぜひこれらの作品を再度見てみてください。

【レベル】:ホワイトクラス~ゴールドクラス