鬼のような形相でにらめつけながら、帰っていったそうです。
部長が帰った後、タカギさん達はこの件について話し合いました。
みんなの想いは、ただ一つでした。
「悪いのは、俺らだけどさ。だけど、あんなにバカみたいに怒らなくたっていいじゃん」
彼らにしてみれば、センターデスクにケーキを置いておくことだって、十分紛らわしい。それに、中学生みたく、並べて罵声を浴びせやがって。
彼らは、反省の態度から、怒りのほうにシフトしていったのです。
けれど、タカギさんが、
「でもさ、明日、もう一回謝ろうよ。このままじゃ、仕事にも支障が出てくるだろ。それと、明日、代わりのものを買って謝ろうよ。今からじゃ、どの店も閉まっているし。」
と話して、その日はそれでお開きになりました。
翌日。
部長の怒りは、日をまたいでも衰えることを知りませんでした。
再度、全員で謝罪しても、ぐちぐち文句ばかりを言われたそうです。
「俺がせっかく買ってきたのに。この野郎」
もうその時点で、彼らの部長に対する思いは、失望だけだったそうです。
ただ、ちゃんと許してもらえるまでは謝らないといけないーもちろん上司ですから、自分の評価にかかわってくる、という側面もありましたーというわけで、お昼休憩中に、代替になるようなもの(といっても、相当高価なもの)を買ってきたそうです。
それを持って再度、彼らは謝りに行きました。
それを見た瞬間、部長の顔から怒りがすっと消えたそうです。
そうとういい代替品だったそうです。
「あれはさ、妻のために、俺が買ってきたものなんだよ。あの日、妻にあれをお土産で渡そうと思ってたんだ。だから、あんなに怒ってしまったんだよ」
そう、説明を受け、やっと部長の機嫌がなおったことに安堵したそうです。
しかし、安堵したのもつかの間、彼らの失望が、今度は怒りに変わっていきました。
タカギさんは席に戻ると、あることを決心したそうです。
「あいつ(部長)をこの部署から、追い出してやる」
つまりは、クーデターです。
タカギさんにしてみれば、ケーキを勝手に食べちゃったのは悪いけど、置いておく場所がよくないし、それにあんなに誠意をもって謝っても、全然許してもらえなかった。
そんな人間が自分の上司でいいのだろうか?
そんな疑念がふつふつと怒りに変わっていき、もう自分でも止められなかったそうです。
タカギさんは、まず食べてしまった同僚とメールやら何やらで意見交換をし、皆の意見が一致するとみると、クーデターを起こすアクションを実行し始めました。
彼は社内でもいろいろとコネクションを持っており、なおかつ、その部長は”いろいろとあった”ため、社内の政治力を使えば、追い出せることに絶対の確信をもっていたそうです。
そして、タカギさんは ”そのタスクに全精力を尽くした” のでした。
(つづく…)
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