・ホビット庄とあなたの世界の共通点
あの壮絶な旅から、戦いから帰ってきたとき、それでもホビット庄は、ホビット庄のままでした。フロド一行の働きがなければ、ホビット庄だけでなく、世界が滅びていましたが、
彼らは、それに無関心で、興味も持ちませんでした。
ですので、感謝すら出来なかったのです。
還ってきたとき、彼らは、「あー、またあのどうしようもない奴らが帰ってきた」ぐらいにしか思いませんでした。彼らが、変わって帰ってきたことすら、
さっぱり気づけませんでした。
あなたは、もうピンときますよね?
そうです、本当に、これはあなたのことを話しているのです。
誰も、あなたのことをわかりません。
あなたが、とてつもない旅の最中にいることを気付けません。
働かないどうしようもない奴、負け組の奴、わけわかんないばかな奴…。
社会は、あなたにあらゆる負のレッテルを貼るでしょう。
あなたが何をしてくれているのか?それに気づかないまま。
ですので、私はあなたの旅の価値をまず、話しているのです。
死と隣り合わせのこの旅の中では、その尋常ではない辛さにあなたはあなたを見失うからです。
ですので、私はこうしてあなたを励ましているのです。
さて、フロドが力の指輪を葬り去り、ホビット庄に帰ってきたとき、彼らはもう、旅に出る前の彼らではありませんでした。
彼らは、ついにやり遂げたからです。
彼らの在り方は、やり遂げたものが放つオーラをまとっていて、彼らの目の中には、それまであったエゴ特有の打算的な幼さが消え去っていました。
そのことに、誰も気づきません。
誰もが、酒を飲むこと、たばこを吸うこと、踊ることに夢中で、
その違いに気づくものは、いませんでした。
・橋を渡ったフロド
彼ら一行の中でも、フロドは特に変わってしまいました。達成した後、彼はもう、旅に出る前の生活に戻れないことを知りました。
もう元の世界で生きていくことはできないことを、誰に言われなくとも、悟るのです。
みなさん、わかりますよね?
これが何を言おうとしているのか?
みなさんも、もう元の世界には戻れないことを知っています。
実感しています。
何かの聖なる書物の中で、「あなたは元の世界に戻れなくなるのだ」
と言っていて、それをあなたが読んだとしても、それは、あなたにとっては、既に事実であることを知っています。
もう、それは、概念ではありませんね。
私のところに来る全ての人は、「もう元の世界には、戻れない」
と言います。
そうです。本当に、そうなのです。
そのリングは、外れてしまったのです。
以前までの世界との関わりを持っていたコードが外れてしまったのです。
フロドが、そういう時、あなたは、「ああ、これはわかる。これは、私のことだ」と感じるはずです。
そうです。本当に、これはあなたの話なのです。
・空っぽのまま
フロドはもう、世界とのリングが完全に外れ、元の生き方をすることができなくなっていることに気づきます。彼の目は、もう旅に出る前のそれとは全く違うものになってしまっていました。
彼は、誰にも知られずホビットを救ったのみならず、世界を救いました。
そして、その偉業を誇らず、騒がず、喧伝せず、一人静かに暮らしていました。
ただ、成し遂げてしまった彼は、既に空っぽでした。
仲間と騒いだとしても、そこには空虚さが感じられ、以前の喜びはどこいったものか?どこにもつかまれず、かといってどこにもつかまりたくもない状態になっていたはずです。
知覚するすべては、愛にあふれてはいるものの同時に、そこには空っぽさしかないことも見て取れました。
そこには、何もない。
彼は、心底それを感じ、日々を生きていたことでしょう。
彼は、もう彼ではなく、空っぽでした。
フロド・バギンズを演じる時間が刻一刻となくなっていくのを感じていたことでしょう。
そして、来たるべき時が訪れたのです。
エルフ、ガンダルフ、ビルボが旅立つ時がやってきたのです。
・最後のメッセージ
港のまえで、彼らを見送るとき、突如フロドはサムたちに別れを告げます。「私はもう、ここにはいれない。旅立つ時がやってきたのだ」と。
そうです、ひとたび悟りを開いたのであれば、もう世界に留まることはできません。
彼は、去らなければいけないし、去れるのです。
幻想の中でのゲームは、もう終了なのです。
そして、彼らを乗せた船は、輝きの中に、光の中に消えていってしまいました。
これは、何かに似ていませんか?
輝き、これが私たちが還る場所です。
真我を完全に実現したものは、輝きの中に行ってしまうのです。
これは、いわゆる「最後の一歩」の状態なのです。
彼は、最後に、サムにこう言い残して消えてしまいます。
「二つのものに裂かれず、決して欠くことのない一つのものとなって、人生を生きよ」と。
これが、最後のメッセージです。
二つのものになることは、私たちにとって、地獄だからです。
偽物である自分で生きること、自分だと思っている自分として生きること。
これが、二つのものです。
だからこそ、一つのものとして、生きることが肝要だと、輝きの中からささやきかけたのです。
何気なく、合一状態がいかに重要なのかを、私たちにここで伝えている、とは感じられないでしょうか。
彼が、指輪を葬り去った後、彼は二つのものに別れること、二つのものとして在ることに、終止符を打ちました。
だからこそ、もうホビット庄で、この世界で生きる必要はなくなったのです。
映画の中では、このメッセージはあまりに不意に差し込まれています。
ほとんど全ての人は、このことの本当の意味に気づかないでしょう。
けれども、これはあなたへのメッセージなのです。
なぜなら、これはあなたが歩いている物語なのですから。
以上で、このお話を終わりますが、あなたが辛くて歩けなくなりそうなとき、
この映画を観てください。
そして、これがあなたのことであると、気づいてください。
間違いなく、この映画は、あなたの役に立つでしょう。
(おわり)
【レベル】:ユニティクラス
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